フンッと息を吐いて愛理さんはぐいっと私の腕を引っ張った。

「さぁ、ノエルちゃん行くわよ」

「あ、ハイ。よろしくお願いします。修一郎さん行ってきます。修一郎さんも飲み過ぎには気を付けて下さいね」

修一郎さんに声をかけて、愛理さんに引きずられるように専務室を出た。

「ノエル、気を付けて」

心配そうな修一郎さんと別れて私は愛理さんと久しぶりの夜のお出かけを楽しんだ。



22時過ぎにマンションに戻ってきたけれど、修一郎さんもまだ帰って来ていなかった。

愛理さんは修一郎さんが戻るまで一緒にいてくれると言って、リビングで二人で寛いだ会話を楽しんだ。

佐々木さんとの結婚が決まるまでの話では盛り上がった。

「そういえば、ノエルちゃんてうちの両親の前だと守さんの事『お義兄さん』って呼ぶでしょ?あれ、実は守さんが喜んでて」

「ええ?」

「守さんって末っ子だから弟妹の存在に憧れてたらしいのよね。私と結婚して弟ができたけど、修一郎じゃ可愛げないし。ノエルちゃんに『お義兄さん』って呼ばれて感動したんだって~笑っちゃうでしょ」

「知りませんでした。お義兄さんってクールな感じかと思ってましたし」

いい意味で佐々木さんに対するイメージが変わった。

「期間限定の義妹ですけど、まだもう少し『お義兄さん』って呼ばせてもらいますね」

にっこりと愛理さんに返事をした。

「ねえ、ノエルちゃん。それなんだけどね・・・」