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「明日の集まりは若い経営者がメインなんだ。真人や親しいヤツらも何人か参加する」

いつものようにお風呂上がりに2人でリビングでのんびりビールを飲んでいると修一郎さんが呟くように言った。

「それにノエルを連れて行くか迷ってる」

「え?どうして?」

最近はパーティーだけでなく、少人数の会食などにも私を伴っていたのにどうしたんだろう。
首をかしげて修一郎さんの返事を待った。

でも、待っていても修一郎さんは黙ってビールを飲んでいて口を開かなかった。

「私が行くことを修一郎さんがためらうのなら、私が行かなければいいんですよ。明日はお留守番しますね」

どうして私を連れて行くのをためらうのかはわからないけれど、私が行かないことで解決するのならそれでいい。

疑問はあったけれど、私は仮初めの婚約者。
時期が来たら婚約は解消になるのだから、修一郎さんの親しい友人には会わない方がいいだろう。

私は自分の中に疑問を封じ込めた。

「じゃあ、明日は若い人たちの集まりだから修一郎さんのお帰りは遅くなりそうですね。明日は金曜ですけど、土曜日にも仕事が入っていたし体調を考えて今夜は早く休んだほうが良さそうですね」

私は修一郎さんにそう言って自分のグラスに残ったビールを一気に飲み干した。

先に洗面所を使ってしまった方が良いだろうと、グラスを持ってソファーから立ち上がろうとしたところで腕を軽くつかまれた。

「待って」

どうしたのかと修一郎さんを見ても私の方を見ようとしない。

「修一郎さん、どうしたの?もう寝ますよ」

私の左腕を軽くつかんでいる修一郎さんの手を右手で触った。