私は修一郎さんの取り扱いを間違えたのだから。


これで何回目だろう。

初めての時はひどかった。

あの時は化粧室でご令嬢達に囲まれて嫌がらせをされた。

わざとヒールで踏まれそうになり慌てて避けたのだけど、別のご令嬢に踏まれてしまった。

幸いヒール部分じゃなくて相手のつま先部分だったから、大怪我は免れたのだけど、それでも踏まれた足の甲が少し痛む。

修一郎さんの元に戻りまた二人で挨拶回りをしていたけれど、私が少し足元を気にしていたのにすぐに気が付いたらしい。

「ノエルどうしたの?」と聞かれてしまった。

「慣れないヒールで少し靴擦れ・・・でも、全然大丈夫よ」

ニコッとしながら返事をしたつもりだったけど修一郎さんの顔がみるみるうちに険しくなった。

「帰るよ」

そう言って私の膝裏に手をまわしたと思ったらスッと抱き上げてお姫様抱っこで歩き出したのだ。

もちろん、会場内はざわつき令嬢たちの小さな悲鳴まで上がった。
私も悲鳴をあげた一人なんだけど。

「修一郎さん、大丈夫だから下ろして」

私も小さく抗議の声を上げたけど聞いてくれない。

「ダメだ。黙っておとなしくしていて」

「そんなに大げさにしなくても」と言っても「恥ずかしい」と言っても聞いてくれない。

「そんなに恥ずかしいなら顔を俺の胸に付けて隠せばいい」というありさま。

結局、会場内の温かい目や冷たい目に見送られて退場。

車中でハイヒールを脱がされ「やっぱり靴擦れじゃない」と私の足の甲を確認されてしまった。

「ちょっと不注意で」と弁解するけど、そんな言い訳に騙されてくれるほど修一郎さんは甘くない。

「どこの誰?」
不機嫌モード全開。

「ううん、どこのご令嬢かはわからないの。だから気にしないで」

「気にしないはずないだろ。もっと早く言えばいいのに」

そう言ってから私を抱き寄せた。
「もっと早く気が付いてあげられなくてごめん」

私は慌てた。「私が言わなかっただけよ。ごめんなさい。これからはもっと早く言うから」

修一郎さんは頷いて頬にキスを落とした。

「まあ、会場全体に見せつけてやったから今回は報復は我慢するよ」

うん?