それから佐々木さんの言う通りそれから幾つかのパーティーに出席することになった。

久しぶりの大きなパーティーでは前回の婚約披露の時よりも緊張したけれど、自分たちが主役ではないからずっと修一郎さんが一緒にいてくれた。

私のそばを離れることなく笑顔でいろいろな人たちに挨拶して回り私を紹介する。
私よりも修一郎さんの方が疲れてしまうんじゃないかと心配になるほどだ。

昔は安堂の娘として公の場に出ていたから、さすがに何回か出席するとこんなパーティーの雰囲気にも慣れてきた。

慣れないのは、他の出席者からの視線。
同世代の女性からの冷ややかな視線だ。

樺山さんのようなあからさまな『私はあなたが嫌いです』っていうレーザービームのような視線から冷笑するような視線。
それが集団になり一気に送られるとなかなか堪える。

思わずため息を漏らしてしまった。

はっと気が付いた時にはもう遅い。

「ノエル、疲れたかい」

まずい、修一郎さんに聞かれてしまった。

「いいえ、修一郎さん。大丈夫ですよ。何でもないです」
慌てて笑顔で手を振って何でもないアピールをするけど、修一郎さんは納得しない。

「少し顔色が悪いかな」

「そ、そんなことないですよ。大丈夫ですから、さあご挨拶の続きに回りましょう」

あわあわしながら修一郎さんの腕を軽く引っ張った。ここで修一郎さんへの対応を間違えると大変なことになる。

「ん、ノエル怪しい。熱でもある?」

あ、まずい。こ、これはもう手遅れか。
私はきゅっと目を閉じて次にされる行為を覚悟した。

後頭部と腰に彼の手が添えられて、私のおでこにこつんと彼のおでこが当たった。

ひいいっ
やっぱりきた。

「熱は・・・ないか。でも、顔が赤いしだるいなら帰ろうか?」

私の顔をのぞき込んでそんな事を言う。

顔が赤いのは今あなたがそんなことしたからです!と言いたいところをぐっと飲み込んだ。

ああ、さらにあそこの集団からの視線が痛い!
視線で人が殺せるのなら私は今日までに何回殺されていることだろう・・・。

今回のおでここっつんくらいならかわいいほうだと諦めよう。
たとえそれが公衆の面前でも。