その後は淡水魚の水槽やペンギンを見て回った。イルカショーが見たかったけど、後ろの席に見知らぬ人がいると気になってショーを楽しめない気がして諦めた。

「また来ればいいさ」
私の頭をポンポンとして修一郎さんは励ましてくれた。
「そうですね。いつか来られるといいな」
私は曖昧に笑った。

「ノエル、夕食は何が食べたい?食べたいものを言って」
「あ、それなんですけど・・・修一郎さん、私がマンションで夕食を作るってダメですか?」

「え?いいのか?」
「はい。あ、でもたいしたものは作れませんよ。私にできるのは家庭料理ですから」
「いや、嬉しいよ」
「昨夜からずっと外食でしたし、私も修一郎さんに自宅でゆっくり食べてもらえたら嬉しいです」

ふふっと微笑み合って、私たちは水族館を後にした。

修一郎さんの話では冷蔵庫に食材はないけれど、一通りの調味料はあるらしい。

それって・・・
胸の奥がチクリとした。
元カノが揃えた調味料かな。

「調味料があるのは実家からたまにお手伝いさんが来て料理をしてくれるから。それにたまには自分で簡単な自炊をすることもあるよ」
と教えてくれた。

あれ、修一郎さんってエスパー?
私の考えてることがわかるの?
目を丸くした私を修一郎さんは笑った。
「ノエル、わかりやすく表情に出てる」と。

やだ、恥ずかしい。

1人で買い物には行けないから、修一郎さんに一緒にスーパーマーケットに行ってもらう。
ショッピングカートを押してもらい食材を選んでいると、周りのお客さんたちの視線に気が付いた。

女性客がチラチラと修一郎さんを見ている。
水族館でも感じた視線。
隣にいる修一郎さんをチラッと見ると、何ごともないような涼しい顔をしている。
イケメンはこんな視線も慣れっこなんだろうな。