二人で暮らすマンションの部屋に戻ってきた。

ドアを開けてもらい玄関に入ると「ノエル」と呼び止められる。

ん、と修一郎さんを見るとギュッと抱きしめられた。

私の肩に顔をうずめて「おかえり」と言う。

ああ、いつぞやの私のよう。

「ただいま、修一郎さん」

修一郎さんの耳元で返事をすると、くすぐったかったのか修一郎さんの顔が少し離れたから、とびきりの笑顔を見せて修一郎さんの頬に軽くキスをした。

一瞬驚いた表情を見せたと思ったら、私をそのまま抱き上げて黙ったままずんずんとリビングに向かって進んでいく。

「修一郎さん、どうしたの」

「いいから」

そしてリビングを通過してたどり着いたのは修一郎さんのお部屋。

部屋のライトも点けられることなく私はそっと修一郎さんのベッドに下ろされた。

私はドキドキして心臓が喉から飛び出してしまいそう。

修一郎さんは私から離れてウォークインクローゼットに入って行き何か小さなものを持ってすぐに出てきた。

「ノエル」

私の隣に腰かけて私の左手をそっと持ち上げる。
うん、と私が首をかしげると私の左手にそっと修一郎さんのキスが下りてきた。

「ノエル、偽装でも仮でもなく本当の婚約者になって欲しい。俺と結婚してくれ。ここに本物の婚約指輪と結婚指輪をはめさせてくれ」

月明かりの中、修一郎さんと私の目と目がしっかりと合った。
修一郎さんの瞳の奥にまで私が映っているだろうか。
私の身体の奥には修一郎さんがしっかりと住みついている。

「もう、離したくない。誰にも邪魔されたくない。もう待てない」

修一郎さんの強い言葉に私も強く頷いた。

「私ももう離れられません。私を修一郎さんの奥さんにして下さい。もう絶対に逃げませんから」

握られた左手薬指の指輪が抜かれる。

どうしてと言う前に「だから、他の女がはめたものはイヤだったんだ」と言って、先ほどクローゼットから出してきた小さな箱を手に取った。