「ところで、元林さんって何者なの?こんな高級な別荘が実家の持ち物で。私たちの家庭教師もやってもらってたけど、すごく頭もいいし、うちのおじいちゃんとドイツ語で会話してるよね。私がお世話になった知り合いの病院って何?どこ?どんな関係?それに、ホテルに私用の車で来てたのもどうして?」

私は元林さんにしがみつくようにして次々と湧いてくる疑問をぶつけた。

その疑問に口を開いたのは修一郎さんだった。

「俺にも教えて下さい。どうして工藤家のご子息が安堂家の運転手として15年も働いていたのか」

工藤家のご子息?

「工藤家のご子息って何?」

元林さんは圭介と顔を見合わせて苦笑した。

「私の本名は工藤貴彦。工藤物産の次男です」

「工藤物産っていったら如月コーポレーション関連の」

「そうです。如月コーポレーションの現社長は私のまた従弟にあたります」

「え、意味が分かんない。工藤物産の次男とか。元林さんは元林さんじゃなかったってこと?」

「そうですね。お嬢さまが『桐島絵瑠』と名乗っていたのと同じで私も本名を隠していました。ああ、もちろん旦那様と奥様はご存知ですよ。若いころ家業が嫌で飛び出してからふらふらしていた私を安堂社長が拾ってくださって今まで面倒を見てくれたんです」

元林さんにそんないきさつがあったとは。
「そうなんだ。ケイも知ってたの?」

振り返り圭介を見ると首を横に振っている。
「俺が聞いたのは先週」