「お嬢さま」

元林さんは喉の奥を鳴らして咳払いをした。

「私が何を言いたいかというと・・・お嬢さまは自分を出してもう少し我儘になっていいということです」

「今でもじゅうぶん我儘だよ」

「いいえ、自分の気持ちを殺して遠慮しているようにしか見えません。あとは、怖がって行動しないでいるってとこですね」

「今の私に何ができるっていうの?」

「ご自分の気持ちをぶつけてみたらいかがですか?本当に好きな男性ができたのでしょう?」

「無理だよ。私のことなんて・・・そのうち邪魔になる」

「私はお嬢さまをそんなうじうじとした女の腐ったようなボウフラみたいな女性にお育てした覚えはありませんよ」

ちょっと待って。
うじうじは当たってるけど、女の腐ったのーとか、ボウフラみたいーとかヒドイことを言われた気がする。

「女の腐ったのって、男性に使う言葉でしょ。私はちゃんとした女です。男じゃありませんからね」

「はい、存じ上げております。ですからちゃんとした女のノエル様はどーんと当たっておいでなさい。それで砕けたら骨は箒で掃いて粉まで拾って差し上げますから」

元林さんは明るく笑った。

はあ?
そんな元林さんにつられて私も笑ってしまう。

「お嬢さまの好きになった方はそんな事をグダグダいうような器の小さい男ではないと思いますよ」

「・・・そうかな。そうだといいな。
ここから戻ってストーカーの件が片付いたら当たって砕けてみるのもありかな」