元林さんはギュッと口角を引き締めた。

「お嬢さまはいろいろあったせいで私のことも信じられないかもしれませんが、今私がお話ししたことは事実です。お嬢さまがシャワーを浴びている間に圭介様にお目覚めになったことを連絡しましたので、もう少ししたらこちらにお見えになりますよ」

「圭介が?」

「はい。ずいぶんと心配してらっしゃいました」

「私、元林さんのことは信頼してるよ、もちろん。だって10歳の頃から元林さんの私を見る目は全然変わらないもの」

そう、何があっても、私に向ける眼は優しい。
叱られることがなかったわけじゃない。でも、瞳の奥にいつでも優しさがあった。
それは10年前も昨日もそして今も変わらない。

仮に今元林さんに拉致監禁されていたとしても・・・私はその状況を甘んじて受け入れるだろう。
何か事情があるに違いないと。

でも、そんな心配はいらない気がする。
みたところ、いつもの元林さんだから。

「信用していただきありがとうございます」
元林さんはにこりと笑った。

「それで、私のグラスをすり替えて睡眠薬を飲ませた女の人が誰なのかわかっているの?」

「昨日の圭介様からの連絡ではホテルの監視カメラから容疑者が特定されたようです」

「・・・私の知っている人?」

「そうですね。知っていると言えばそうです。犯人はお嬢さまをストーキングした挙句に傷つけた春日創一の母親です」

えっ!

私は絶句した。

春日創一
最初のストーカーだ。