すっきりした頭で考える。
今、自分が置かれた状況について。

・・・。
ここはどこなのか。
どのくらい眠っていたのか。
どうしてここにいるのか。
元林さんの手を握りしめてるこの私の左手に意味はあるのか。

全てが謎だ。

いったい今何時なんだろう。
そう思った途端、お腹がぐーっと大きく鳴った。

うわっ!っと思ったら元林さんの目が開いて私と目が合ってしまった。

「・・・お嬢さまお目覚めでしたか。どうやらお腹がすいたようですね」

気まずい。

自然に私の左手を離すと「何か作りますから少しお待ちください」と立ち上がり伸びをした。
穏やかなその表情に逆に驚く。

「あ、あのね、元林さん。まず、この状況を説明して欲しいんだけど」

私も身体を起こして元林さんを見つめた。

「ああ、お嬢さま、髪もお顔も大変なことになっていますよ」

私の顔を見た後、元林さんの視線が私の顔を見つめる。
それは心から心配している顔でいやらしさなど微塵も感じさせるようなものではなかった。

「ええっ、やだっ。ホントだわ。どうしよう」

自分の頭を触るとセットした髪が所どころこんがらがっているのがわかってぎょっとする。
顔に触れると肌ががさがさするし。


せめて顔を洗いたい。
着替えもしたい。

そう思っていると、「お嬢さま」と元林さんが声をかけてきた。

「私が食事の支度をしている間にお風呂に入ってスッキリされたらいかがですか」

「ええっと、そ、それはさすがに・・・どうなんでしょうか」

「脱衣所も浴室にも鍵がかかります。神に誓って、私は大切なお嬢さまに不埒な真似はいたしません」

焦る私に元林さんは至極真面目な顔をして言った。

『不埒な真似』ね・・・。

元林さんと私の間にそんなものは想像できないけど。