その後、結婚話をなかったことにと働きかけてくれたのは圭介だ。
元から安堂家にたいしたメリットのある話でもなかった上に正式に婚約しているわけでもなく、昂輝さんと結婚したくないと本人が言っているのだから間もなく婚約はなかったことになった。

しかし、あれほど懐いていたのに急に結婚したくなくなった理由を問われそれに返事をすることができず、結局両親は私の我儘だと受け止めた。

無責任だけれど、神崎家の方がどうだったのかは聞いていない。
揉めなかったのだから昂輝さんも大賛成だったのだろう。
もしかしたら同年代の愛し合っている人がいたのかもしれない。
私はもう昂輝さんの話は聞きたくなかった。

それからは会社のパーティーに参加していない。
そんな事が平然と行われるそちらの世界とは関わりたくなかった。

その後、大学の進学先を看護学部に変えて将来ANDOの会社に入ることも拒否した私は両親と大喧嘩の末に家を出た。

両親からの補助は一切なく、奨学金とそれまでの預金、圭介からの補助と自分のアルバイトで稼いだお金で地方の国立大学の看護学部に進学し、そのまま就職もした。
その後、ストーカー被害に遭うまで安堂の両親とはほとんど連絡を取っていなかった。



そんな事を思い出しているうちに車の振動と車内の暖房で睡魔が襲ってきた。

「片岡さん、そろそろ実家にお願いします」

そう言ったつもりだけど、眠くて言えたかどうかわからない・・・。