一緒にいた圭介がグイっと私の腕を引っ張った。

「ノエル、帰るぞ」

私は予想外の出来事に呆然としてしまい、早足の圭介に引きずられるようにして会場から出た。
そして両親より先に元林さんの車で家に帰ったのだけれど、そのあたりの記憶はあまりない。

翌日、昂輝さんがうちに現れた。

二人きりで話したいという昂輝さんを拒否して圭介にそばにいてもらい会った。

その時に言われたのがこれだ。
「エル、なんか誤解してるみたいだから言うけどな。キスもそれ以上だって他の女とするけど、だからってその女と愛し合ってるわけじゃないし、本気で付き合ってるってわけじゃないから」

私は愕然とした。

それまでだってパーティーに行くと大人たちの乱れた姿を目にすることがあったし、両親は隠していたけれど、愛人や愛人の間に生まれた子供との間でトラブルになる経営者の話など子供ながらにたくさん聞いてきた。

でもそれは自分とは遠いところの話だと思っていたのだ。
うちの両親は仲がいいし、祖父母も叔父叔母のところもそうだ。

自分の身に降りかかって初めて遠い世界の話ではないと知った。
ちょうど同じ頃にお嬢様学校のクラスメートから「父親に愛人が複数いた」「母じゃない女性に産ませた弟がいる」なんて話を聞いたばかりでもあった。

昂輝さんと結婚を夢見ていた私にはショックでしかない。
将来にわたる浮気を宣言されたのだから。

「私はそんなの絶対に無理だから!!」泣き叫んで昂輝さんを置き去りにして部屋を飛び出した。