会場について圭介や実家の両親を目で探す。

いた。圭介の姿は見当たらないけれど、両親を見つけた。

今日の主役である叔父夫婦と談笑している。

修一郎さんにエスコートされながらあいさつに向かった。

「叔父さま、叔母さま、ご無沙汰しています」

私が声をかけると
「エルちゃん。待ってたよ」と叔父が優しい目で迎えてくれた。

「エルちゃん、本当に久しぶりね。今日来てくれて嬉しいわ。で、こちらがあの井原さん?」

叔父の奥さんの貴子叔母さまが瞳をキラキラとさせて修一郎さんの顔をを見ている。私は苦笑した。
オンナはいくつになってもイケメン好きらしい。

それから修一郎さんが叔父夫婦に挨拶するとわかりやすく貴子叔母さまが食いついてきた。

貴子叔母さまの全身から星が飛び出してくるのではないかってくらいにキラキラさせながら修一郎さんにマシンガンのように話しかけている。
嫌がる態度も見せず貴子叔母さまのそれに丁寧に返事をしている修一郎さんはやっぱり大人で立派だ。

私は『そろそろ助けて』と父に視線を向ける。

貴子叔母さまは悪い人ではないけれど、かなり話が長い。
叔父も苦笑しているけど、叔父は自分より若い奥さんに甘くて叔父の救援は期待できない。

「ノエル、あちらに棚橋専務や小杉常務がいるから挨拶してきなさい。ずいぶんと会っていないだろう」

父が私に声をかける。

「はい」
私はにっこりとして修一郎さんの腕に手をかけた。

「叔父さま、叔母さま。私たちご挨拶に行ってきますね」

「ああ、行っておいで。久しぶりにエルちゃんに会って皆喜ぶだろう」

「あら、やだ。そうね。ごめんなさいね、お引き留めしてしまって」

そうしてやっと叔父夫婦から解放された。

「ごめんね、修一郎さん」
私はそっと修一郎さんに謝った。

「独身の女性を紹介されるわけじゃないし何の問題もないよ」
修一郎さんは優しく私に笑みを返してくれた。