「気持ちがなくてもできるって、そんなこと誰が言ったんだ?何でそんなこというんだ。確かにそういうやつはいる。でも、みんながそうっていうことじゃないだろ?例えば、圭介君だって」

「ケイはそんな事しません!」

「ほらね、圭介君のことは否定できるんだ。だったら俺のことはどうして信じられないんだ?」

「だから、信じてないってわけじゃなくて・・・」

「一緒に暮らし始めて、ノエルと俺の心の距離が近づいたと思っていたがそれは俺だけがそう思っていたのか?」

「いいえ、私もそう思ってました」

「では、なぜこんなに頑なに今の俺を否定するんだ」

否定する?そうか、今の私は修一郎さんを否定してしまっているんだ。
修一郎さんはあのヒトじゃない。

「私が自分自身を肯定できないから。でもそのことで修一郎さんのことを否定するような言い方になってしまっていたのかもしれません。ごめんなさい。冷静に考えてみたら私が怒る資格もないですしね。
私は昔、人に言われたことに囚われすぎて他人のことまで否定してしまっていたみたいです」

胸の奥が古傷でじくりと痛む。

「昔、私の近くにいた人がそういう事を平気でできる人だったので。その人とこの世界の人みんなを・・・修一郎さんを同列に見てました。修一郎さんも出会ったばかりの私の頬にキスとかしてましたしね」

少し、意地悪な言い方になってしまうけどそれは事実。

「ああ、ノエルに触れたかったからね、好意を持った相手に触れたくなるのは当然だろう?俺はノエルに一目ぼれしていたし」

思わぬ切り返しにぎょっとする。

一目惚れって言った?

今、修一郎さん、一目惚れって言った??