「医療関係者はそういうかもしれない。でも、助けてもらった側は違うんだ。真人は重大な後遺症を残す可能性があったんだからなおさらだ」

「真人さんに後遺症がなかったのは私の救護のせいじゃないですよ」

「そうかもしれないけど、俺たちは素人なんだ。あの時助けてくれたノエルのことを女神だと思ったっておかしくはないだろう?」

私は黙った。私がしたことの内容はともかく、確かに医療知識のない人から見たらそういう見方ができるのかもしれない。

「俺はある意味真人を裏切っていたんだ。あの時の真人の女神をいち早く見つけていたのに真人にはそれを教えなかった。
ノエルの抱えてる事情を考えたらいろいろ言い訳はできるけれど、それでも婚約発表の後にでも真人にだけは言うべきだった。
・・・あの時に一緒にいた女がノエルに気が付いた。一昨日真人の前でその話をされたんだ」

あの時に一緒にいた女・・・。
確か、2人女性がいたような。
1人は修一郎さんにしがみつくように腕を組んでいた。
もう1人のことはよく覚えていないけれど、どちらの女性も雑誌から飛び出してきたようなきらびやかな格好をしていたように思う。

真人さんの吐物で汚れた私のことを『汚い』と蔑んだように離れたところから言っていたなと記憶している。
もちろん、私もそんなことを言われて彼女たちに良い印象など持っているはずがない。

「前にパーティーでワインをかけられたことがあっただろ。あの時のあの場にあの女もいたらしい。その時にノエルの顔を見て気が付いたと言っていた」

あの時は夜の繁華街で、しかもウイッグにカラコン、メイクも地味に見えるようにしていた。一転してパーティーでは華やかのメイクをして着飾っていたっていうのに。
その人はかなりの観察眼をしている。