「う、産まれたぁー!」


「若葉、よく頑張ったな」


陸の結婚式から間もなく、
私は出産した。


「おめでとうございます。
 元気な男の子ですよ」


「男の子かぁ」


歩夢は嬉しそうに楓を見つめる。


私が楓に手を伸ばすと、
楓はその指を小さな手で握った。


ああ、私と歩夢の赤ちゃんだ。


こんなにもあったかくて、
こんなにもかわいい楓。


私、こんなに幸せでいいのかな?


罰が当たりそうで少し怖い。


そんな私の嫌な予感は的中することになる。













「単身赴任?今度はどこに?」


楓にミルクを飲ませている時だった。


歩夢はスーツを脱ぎながら話し始めた。


「アメリカ。今度は1年か2年」


「えっ!?そんな急に・・・」


楓が生まれて半年が経った今、
歩夢は前より上の役職に就いたため、
出張が多くなっていた。


だけど、アメリカに
1年くらいだなんて初めて・・・。


不安そうな顔をした私に、
歩夢は優しく笑いかけた。


「ごめんな。大事な時に
 一人にしちゃうけど、
 出来るだけ早く帰るようにするから」


「うん・・・」


「楓~。ママと二人で
 待っててな~?」


楓は歩夢の言葉が分かったみたいに、
笑い始めた。


その顔を二人で見ていると、
とても落ち着く。


楓がこの不安を取り除いてくれるかのように、
楓は笑い続けた。


そうしているうちに、
歩夢の出発の日が訪れた。