「きゃっ・・・」


「若葉」


見なくてもわかる。この温かさ。


「歩夢?」


「家に行ったらいなくてさ、
 探したんだぞ?
 こんなとこで何してんの?」


「ちょっとコンビニまで。
 それより見て!月が綺麗だよ」


私の声に歩夢が空を見上げる。


小さく笑った歩夢は私をじっと見つめた。


「若葉」


「なに?」


「・・・嫌なら嫌って言ってもいいんだよ?」



「えっ・・・」




突然の言葉に歩夢の顔を見る。


歩夢は優しく笑ってくれていた。


「結婚の話。無理に急ぐ必要もないし、
 若葉には選ぶ権利がある。
 ただ俺は若葉と一緒になりたい。
 本気なんだ。俺」


「歩夢・・・」


「焦らなくていいから、
 ゆっくり考えてみて」







『歩夢のそばにいてほしい』






ふいに、中島に言われた
言葉を思い返す。






『いつも報われない恋をしてた。
 そのたびに傷ついて、泣いてた。
 そんな歩夢、もう見たくないんだ』






報われない恋・・・。


ここで断ったら、きっと歩夢は
傷つくよね。


また、同じような思いをさせちゃう。


そう思った私は、
自然と口が開いていた。



「私、歩夢のそばにいる」


「えっ?」



「ずっと、ずっと、歩夢の隣にいるよ」



「それってつまり・・・OKってこと?」



「・・・うん」





ねえ、中島、
私だって見たくないよ。


こんなに優しい歩夢が傷つく姿なんて・・・。