「美愛……好きだよ、大好きだ。……どれだけ俺が、君を……君だけを想ってきたか、やっと……やっと伝えられる」


『好きだよ、大好きだ……』

どれほど先輩からその言葉を聞きたかったことか……。


「私も大好き」


そして伝えたかったか……。

先輩に何度も何度も確かめるように抱き締められながら、同じシャンプーの甘い香りに酔いしれながら、私は出会った頃のことを思い出していた。

初めて先輩に恋したのは、まだ18の時。

初めて恋したわけでもないのに、見つめるだけで精一杯、見つめられるだけで胸がドキドキしてそらしてしまう。

少女の頃に戻ったような恋は、もれなく初めての失恋も付いてきた。

気持ちを伝えることさえ出来ず、降り積もる雪の中にそっと凍らせることしか出来ずにいた。

そんな悲しくも純粋な恋から、気付けば早10年の月日が流れていた。