「犯人、25年前にも、同じ事件を起こしているらしいね」

詩織がスマートフォンをいじりながら、驚いた声で言った。

「そうらしいね。テレビでも最近、そのニュースばっかりだよ」

私は、斎藤のことを思い出して答えた。

テレビでもそのニュースは毎日のように流れていたが、それ以上に情報網を駆使していたのは、現代のネット社会だった。
犯人が逮捕されたと同時に、匿名でBBSに書き込まれた。

「でも、本当に捕まってよかったよ。私は風俗嬢じゃないから殺される可能性は低いけど、同じ女性だから、怖かったんだよぉ」

詩織は、ほっと安心したようにため息を吐いた。

「その気持ち、すごく分かるよ。詩織」

「でしょ、梢。私、梢より、綺麗だから」

詩織はいたずらっぽく笑って、私をからかう。

「それ、私がブスってこと!」

私は頬を膨らまし、不満そうに詩織を睨んだ。

「冗談よ、冗談。梢、そんなに怒らないで。私たち、友だちでしょ」

私の肩をポンポンと軽く叩いて、詩織がにっと笑った。