午前10時25分。私は地下鉄と市バスを乗り継いで、R大学に着いた。

6月下旬の今頃の季節は、どんよりとした空が広がっていた。今にも雨が降り出しそうな鈍色の雲が空を覆っていたが、今の私は天気と真逆で晴れやかだった。

「梢、犯人捕まったらしいね」

「うん」

R大学に到着して講義に入ると、友人の田村詩織が声をかけてきた。

さわやかな水色のTシャツに、白いスカートを穿いていた。
パッチリとした目がとても印象的で、透明感のある肌。薄く化粧をしており、亜麻色の長いやわらかい髪の毛から微かに匂う、シャンプーの香りが、私の鼻腔をくすぐる。

ーーーーーー美しい。

女の私が見ても、今の彼女は美しく思えた。