美咲の左手薬指には指輪がなかった。 まさか、夫がいるとは思わなかった。 だが、おれたちは小学校を卒業してから二十年近く経つのだ。 美咲が結婚していても、何らおかしくない。 おれも、彼女も、互いの近況を一切話していなかった。 実は、おれも、美咲も、なんにも知りやしなかったのだ。 先刻(さっき)まで、あんなに激しく身体(からだ)を求め合って、互いの肉体を曝け(さら)合わせたというのに。 もしかしたら、心のどこかで気づいていて、そこから目を逸らしていたのかもしれない。