「私は二ノ宮優子です。はじめまして。この小さな・・・あっ、ここは二ノ宮医院っていうのですが、この病院の医師です。よろしくね。」
 そういって、二ノ宮先生はスッと右手をこちらに差し出した。
 「よろしくお願いします。」
 私の握り返した手に二ノ宮先生の左手が重なる。
 「私も出来る限り力になりますから。」
 なんて嬉しい言葉だろう。
 「ありがとうございます」
 私は精一杯の感謝の気持ちを込めたてお礼を伝える。
 
 探さなきゃ、”わたし”を。不安の迷路に入りそびれた私は幸運だ。
 
 だからきっとみつかる。
 なぜだろう。でも、そう思う。
 
 何かあったらいつでも呼んでくださいね、とそう言い残して先生は部屋を去っていった。
 
 さて、まずは何をしよう。
 そう考えて、とりあえず体を動かすことから始めようと思った。
 しばらく眠っていたために、体中の筋肉が衰え始めていた。
 きしむ体を少しづつ動かし、いろいろな筋肉に刺激を与える。
 そうこうするうちに、ギクシャクしていた体も段々とスムーズになり、楽に病院内を歩き回れるようになった頃には、明るかった空も赤みを増していた。
  
 夕方、薄味の病院食を食べ終え、窓を閉め、テーブルの上のガーベラの水を換えようとしたとき、花瓶の下に何かあるのに気付いた。
 
 (なんだろうこれ)
 
 一見、コースターかなとも思ったけれど、花瓶より小さいのがなんだか不自然な気がする。
 手にとってひっくりかえすと、それは小さなカードの封筒だった。
 
 (私に・・かな・・?)
 
 宛名なんて書いてない。
 しかも、わざわざ花瓶の下に隠されていた・・ような気がする。
 妙に意味深なそのカードに私は興味を惹かれた。
 けれど、誰からかも、私に宛てられたものなのかもわからない。不気味な気もするし、少し見るのが怖い。
 中を見るのをためらっている間、ニ・三度、表・裏とひっくり返し、蛍光灯の下で透かしてみたりしたが、やっぱり何も見えなかった。
 
 (よし、思い切って見てみよう。)

 そう思い、私は小さな封筒からカードを取り出す。
 中のカードは二つ折になっていた。
 
 そっと、指先でカードを開く。
 そこには―