わたしがまだ姫と呼ばれていたころ


「前はね、そんなことなかったの」

「そうだよね。リナ、よく外泊届、出してたもんね。このごろ、ないな、とは思ってたけど」

「うん。ねぇ、この塔って、別れるってことなのかな」

「そうねぇ。リナはどうしたいの、別れたいの?」

「別れたいわけじゃないの。だって、カレのこと、好きなのは事実だもん」

「そっかぁ……。好きなんだよね」

姫は、いったんリナの気持ちを受けとめ、リナの次の言葉を待った。

「とりあえず、新しいほうのカレのも観てくれる?」

「うん。これは『太陽』のカード」

「見てて明るい気持ちになるね」

「そうね。祝福を意味するカードだから」

「じゃ、もう答えは出ちゃったってこと?」