わたしがまだ姫と呼ばれていたころ


そうか、先生にはわたしが思ってること、なんでも伝わっちゃうんだ。
そう思った姫は、ある実験を試みた。

何も言わず、目を閉じる。

「先生、好き。先生のこと、大好きよ」

思いを込めて、念を送ってみた。そして、ゆっくり目を開けた。
先生は少しはにかんだ少年のような顔で姫を見下ろしていた。

実験、成功。
また、目を閉じた。
確信した姫は、さっきより強い思いを送った。

「先生、キスして。わたしのことが本当に大切なら、今すぐして」

口に出すのが恥ずかしいような言葉も、こうして目を閉じて、ただ念じるだけなら、いとも簡単にできた。
ただ、先生とは違って、姫には先生の思っていることが伝わってこない、というもどかしさがあった。