わたしがまだ姫と呼ばれていたころ


「さぁ、そろそろ時間ですよ。あまり遅くなると、おかあさんが心配するから」

あたりはいつの間にか薄暗くなっていた。
いったい何時間ここにいたのだろう。時計がないから正確な時間はわからないけど、少なくとも四時は過ぎているだろう。
……ってことは?

姫はまるで竜宮城で過ごした、浦島太郎のような気分になった。
ここを出たとたん、時代が変わっていて、近未来都市になってたりして?
そんな姫の心のうちを察したのか、先生は笑いだした。

「大丈夫、あなたはおばあさんになんか、なってないから。ここを出たら、またいつもと変わらない町並みがあなたを迎えてくれるから」

姫もつられて笑った。