その昔、わたしがまだ姫と呼ばれていたころの話。

つきあって間もない男に、いきなりお姫さま抱っこをされたことがある。
しかも、外で。

「ちょっと~、やめなさいよ」
足をバタバタさせて手を突っ張って抵抗を試みたが、姫のか弱い力では到底無理な話。

「45」
いきなり、男が言った。

「なんのこと」
ポカンとしている姫を、一度空中に放り投げて抱き直す男。

「危ないでしょ、なにするの」
語気が強くなる姫。