「フランキンセンスは僕たちには、なくてはならない香りだったんだよ」

先生は静かに語り始めた。
姫はベッドに仰向けに寝たまま、黙って聞いていた。

「エジプト時代、祭壇にはいつもフランキンセンスが焚かれていた。馬小屋でイエス・キリストが産まれたとき、東方の三賢者が献上したもののひとつにフランキンセンスがあった。また、修道院では瞑想のとき、フランキンセンスを焚いていた」

そう言うと、先生は姫の目をじっと見つめた。

「だから、懐かしい香りだったのね。でも、僕たち、ってどういうこと?」