先生の意味深な物言いに好奇心を掻き立てられながらも、それまでずっと立ったまま話していた姫は、ようやく手前のイスに腰掛けた。

先生も向こう側のイスにゆっくり座ると、「では、ちょっと失礼」と言うが早いか、姫のからだを目を細めるような感じで見始めた。
からだ、というより正確に言うと、からだの周りの空気を、といった感じで、視線がどことなく定まっていないような見方だ。

「先生、何が見えますか。わたしのオーラを観てるんですか」

「ちょっと静かにしててね」

「あ、ごめんなさい」

しばらく見ていた先生が静かに言った。
「右の後頭部、痛くないですか」

「ええ、なんでわかったんですか。今日伺ったのは、それなんです」