「……あ」
遠くに。
待ち合わせ相手の姿を見つけた。
彼はまだ私には気づかない。
でも、どんどんこちらへと近づいてくる。
久しぶりのその姿。
少し細身のスラッとした身体
整った顔立ち。黒目勝ちな瞳。
かわってない。
だけど少したくましくなった
私の大好きな人。
「………あ」
彼が私に気づく。
私はベンチから立ち上がり、彼に向かって大きく手を振った。
「…………冬室くん!」
冬室くんが微笑む。
私の大好きな笑顔で。
だから私は駆け出した。
彼のもとへ。
その腕の中へ。
冬室くんは受け止めてくれる。
優しく、力強く。
抱き締められた彼の胸元からは桜の花のような香りがした。
「…笠原さん、ただいま」
「おかえりなさい」
やっと春が訪れたのだ。
ーーーーーendーーーーーー