でも、そこには確かに優しいうそもあったり。

うそに固められた中に小さな本当があったり。

簡単に本当に裏返るうそもあったり。

まるで曖昧なんだ。


だから、私は選んでいくよ。

たくさんの気持ちから、言葉から。

どれがうそで、どれが本当で。

どれが悪意で、どれが優しさで。

ちゃんと逃げずに向き合って、選んでいくよ。


そして、あなたに届けるから。

いつも、いつもあなたを想ってうそのような本当を、本当を込めたうそを綴っていくの。

だからあなたも選んでね。


私の小説の中にいる私。

私の言葉の中にいる私。

あなたを好きな私を。

見つけて、選んで……

そしていつかきっと

また、あなたの本当を聞かせほしい。




「……笠原さんって、名前なんだっけ」


自分の席に戻る前に、奥田さんが振り返ってそう聞いてきた。


「え?日南子だよ。ひなこ」

「うーん。じゃあ、ヒナって呼んでいい?」

「え……」

「いつまでも笠原さんじゃ、なんか固いから。うちら友達だしね」

「……」

「……いや?名前呼びきらい?」

私は首を大きく振った。

「そんなことない、嬉しい。あと……私も名前で呼びたい!」

私の返事に奥田さんが笑った。


教室の窓から風が吹き込む。

爽やかで、とても清々しい風だった。