臆病なきみはうそをつく

昼休み終了のチャイムが鳴る。

私たちはお弁当を片付け、席をたった。


「……そうだ、笠原さん。今日の帰り寄り道してかない?どっかでゆっくり話そうよ」

「え、えーと…………うん、いいよ」


うなずくと、奥田さんが笑った。


「やった。いろいろ聞かせてねー。冬室くんとの恋バナとか!」

「そ、それはそんなに話すほどないけど」

「えー、ほんとに~?」

「うん、……今はね」

「なにそれ、意味深ー」


奥田さんが楽しそうにはしゃぐ。

私もそんな彼女を見て、同じように笑顔になった。


不思議だけれど。

笑顔を浮かべると、なんだか明るい気持ちになる。


嬉しいから笑うんじゃなくて。

笑うと気持ちが嬉しくなる。


最近はそうして過ごして、心がちょっぴり前向きになるのを感じていた。


そしてそう過ごせるようになったのは、奥田さんたち周りの人のおかげ。

みんなの笑顔を信じて受け入れようとしたおかげだ。



冬室くん。

あなたは必要なうそもあると言っていたね。

私も今はそう思うよ。


そして、きっと。

うそか本当か決めるのは、自分の心なんだね。


この世界は息苦しいよ。

疑おうと思えば、いくらでも疑える。

うそはどこにでもあふれている。