***
「……笠原さん、最近元気になってきたね」
ある日。
誘われて一緒にお弁当を食べていると、奥田さんがそう言った。
「え?そ、そうかな……」
「うん。その……冬室くんが転校してから、ずっと元気なかったから心配してたんだけど。最近はずいぶん楽しそう」
「……そっか。わかるんだ」
「もちろんだよ。笠原さん何も言わないけど、一緒にいたら伝わるよ」
「……そうだね」
私も、今、伝わった。
奥田さんが私をずっと心配してくれていたこと。
そしてそれを信じたいと思った。
奥田さんの優しさを。
それを感じた自分の心を。
「……なにかあったの、笠原さん。元気になるようなこと。例えば、冬室くんとまた会う約束した……とか」
「ううん。そういうのは、ないよ。でも……」
「でも?」
「メッセージはいつも送ってる……かな」
「メッセージ?メールってこと?」
「……うん。そんな感じ」
「ふーん」
奥田さんはいまいちピンと来ていないみたいだったけど、とりあえずうなずいてくれた。
そして箸を置き、教室の窓から外を眺める。
「また会えるといいね、冬室くんと」
「うん……。でも、きっと大丈夫」
私は、机の端に置いていたスマホをそっと握りしめた。
私が、ここにいるなら。
あなたの想いも、きっと。
あなたのくれた言葉、ひとつひとつにある。



