臆病なきみはうそをつく


***

「……笠原さん、最近元気になってきたね」


ある日。
誘われて一緒にお弁当を食べていると、奥田さんがそう言った。


「え?そ、そうかな……」

「うん。その……冬室くんが転校してから、ずっと元気なかったから心配してたんだけど。最近はずいぶん楽しそう」

「……そっか。わかるんだ」

「もちろんだよ。笠原さん何も言わないけど、一緒にいたら伝わるよ」

「……そうだね」

私も、今、伝わった。

奥田さんが私をずっと心配してくれていたこと。

そしてそれを信じたいと思った。

奥田さんの優しさを。

それを感じた自分の心を。



「……なにかあったの、笠原さん。元気になるようなこと。例えば、冬室くんとまた会う約束した……とか」

「ううん。そういうのは、ないよ。でも……」

「でも?」

「メッセージはいつも送ってる……かな」

「メッセージ?メールってこと?」

「……うん。そんな感じ」

「ふーん」


奥田さんはいまいちピンと来ていないみたいだったけど、とりあえずうなずいてくれた。

そして箸を置き、教室の窓から外を眺める。


「また会えるといいね、冬室くんと」

「うん……。でも、きっと大丈夫」


私は、机の端に置いていたスマホをそっと握りしめた。


私が、ここにいるなら。

あなたの想いも、きっと。

あなたのくれた言葉、ひとつひとつにある。