打ち上げからの帰り道。

冬室くんは、私を家まで送ってくれると言った。


「バス停までだと短いからさ。……今日はもっと笠原さんと一緒にいたいな……って」

「……冬室くん」


私たちをからかうように、でもどこか優しくはやしたてるクラスメイトたちに見送られ、私たちは帰り道を行く。


横を見ると、冬室くんが微笑んでくれる。

この人の隣にいれることが、とても幸せだ。


冬室くんの左を歩く。

彼に私の声が少しでも届きやすいように。


これからも、ずっとこうしていられたらいいな。


「……そういえば、笠原さん。小説のことだけど」

「ん?」
 
「これからも書くつもりなの?」

「あー、えーと。
あの、実はね、今、スマホが壊れてて……」

「え、どうして?」

「球技大会で……その……落としちゃって」


本当は、倒れている冬室くんに駆けつけたときに、無意識に放り投げてしまったからだ。

騒ぎの中、かなりたくさんの人に踏まれたらしく、ベキベキになっていた。


…あのときの私には、冬室くんが何より重要で、スマホのことなんて全く考えていなかった。

私にとって、一番の居場所だったはずなのに。


きっといつの間にか、私は冬室くんの隣が居場所ならいいのに、と思うようになっていたのだ。


「多分、機種変になっちゃうんじゃないかなー。今のスマホ古いやつだし…。

で、もしそうなったら、アプリとか引き継ぎとか面倒だし。

もう……やめてもいいかなって」


未完結の話を放置するのには抵抗があるが、あれはうそだらけの作品だ。

書かない方がいいのかもしれない。