「え……でも……」

冬室くんが戸惑った顔をする。

「それに冬室くん、笠原さんにバスケ教えてあげていたんでしょ?笠原さん今日すごかったんだから……ねえ、笠原さん」

奥田さんは今度は私に同意を求めてくる。

私は、ちょっとだけ迷いながらもうなずいた。


「だからさ、冬室くんも活躍したんだよ。大体、途中で抜けたのは冬室くんが悪いわけじゃないじゃん」

「………でも」

冬室くんは困ったように小さくうつむいた。

クラスメイトの男子生徒が何人か、そんな冬室くんのそばに寄る。

励ますように彼の背を軽く叩いた。


「今回のことだけでなく、いつもみんなには負担をかけているから。みんなに気を使わせてばかりだし。
今日の怪我だって、僕じゃなかったら避けられたのかもしれないし……なんて思っちゃって」

「冬室くん………」

私は驚いて彼の顔を見る。

冬室くんはうつむいて目を伏せていた。

まつげが彼の顔に影を落とす。


……冬室くんが、そんな風にみんなのことを感じていたなんて。


ふと。この前聞いてしまったクラスメイトたちの陰口を思い出す。

あのとき、あの子たちは冬室くんに対してはどうしても気を使うから大変だとぼやいていた。


冬室くんは。

そういう気持ちをとっくにみんなから感じて気づいていたんだ。


胸が傷んだ。

私の方が泣きたくなってしまう。