「あ、やっぱりいたー!」


そのとき。

どこからか声がした。

振り向くと、クラスのみんなが中庭に下りてきていた。


「え、みんな……?」


確か打ち上げに行ったはずじゃ……。

冬室くんも事態が飲み込めないといった様子で呆然としている。


奥田さんが私のそばに駆け寄ってきた。


わ、私たちがしていたこと、見られてないよね。

なんてどきまぎしたけれど、奥田さんたちの平然とした様子を見る限り、大丈夫な気がした……多分。


「笠原さんったらー。冬室くん戻ってきてるなら教えてよ。みんな心配してたんだから」

「え……でも………」


冬室くんが気まずそうに目を伏せた。


「……僕、こんなことになって途中で抜けてしまったし……みんなに心配かけて……。せっかく盛り上がっているのに、気を使わせて、空気が冷めてしまう気がして……」

そう言うと申し訳なさそうに笑う。

冬室くんの優しさと、寂しさが伝わってきて、私はそっと彼の上着の裾を握った。

何をしていいかわからなかったけど、彼を温めたかった。


「……えー、なに言ってるの。そんな気遣いの方が困るよー」

奥田さんがそう言うと、クラスのみんなもうなずいた。