「……冬室くん……!」


みんなと別れた私は、中庭へと走っていく。

バスケットゴールのところにいる冬室くんのところへと。


…冬室くんはゴールにもたれかかるように立っていた。

私が来たことに、少しだけ驚いたように目を開いたが、すぐににっこりと微笑んだ。


「………冬室くん。どうしてこんなところに……」

「病院で特に異常がないって言われたから戻ってきたんだけど……少し教室には入りにくくてさ…….」


冬室くんの目が軽く伏せられた。


「異常なかったんだ………良かった」

「……うん」

「本当に、本当に良かった……。私、わたし……さっき、冬室くんが倒れて目を覚まさなかったとき……どうしようかと、思ったよ……っ」

「笹原さん……心配させて、ごめん」

「いいの。冬室くんが大丈夫なら、いいの……それでいいの。

それに、私も……」

「え?」


私は冬室くんを見つめる。


「私こそ、……ごめんね。昨日のこと……」

「笠原さん」

「あのね……うそだったんだ。例の……コメントくれる人……。
私だけじゃなくて、いろんな人にあんなコメントしてるみたいで……」

「そう……」

「でもさ、よ、よく考えたら、私もうそついていたんだよね。実話じゃないのに、注目されたくて、実話だなんて言ってさ……

私……リアルでのみんなのことうそつきなんて言っておいて、……私だって……私が大切にしていた世界だって、うそばっかりだったよ」

「笠原さん………」


冬室くんが私に一歩、二歩、とゆっくり近づいてきた。

それから、肩に手が乗せられる。