臆病なきみはうそをつく




球技大会の決勝は、午後2時を回ったくらいの時間。

その頃には女子バスケは敗退し、応援要員になっていた。

私も、みんなにまじって、まだ勝ち残っていた男子バレーの応援をする。

もっともはしっこで見ているだけで、クラスメイトと和気あいあい…なんて空気では全くなかったけれど。

それでも、クラスメイトたちの雑談が、ときどき私にも振られたりしていた。


「……冬室くん、大丈夫かな」


誰かがぽつりつぶやく。


「心配だよね。大したことないって先生は言ってたけど」

「ソフトボール飛んできたんだって。こわいよね。そんなの避けられないよ」

「ね、笠原さん」

「え?」

「笠原さん、冬室くんと付き合ってるんでしょ。じゃあさ、ますます心配だよね」

「…………」


そうか。

彼女たちはきっと、あのとき教室で冬室くんのこと笑っていた人たちだ。

あのまま帰ったら姿は見ていないけど、こんな声だった気がする。

でも、あのときとまるで真逆なことを言っている。


どちらが本心なのか。


「…………うん、そうだね。すごく心配………」

「だよね……。あのね、あとでみんなで先生に聞きに行こうって話してるの。冬室くんがどうしてるかって」


そういう彼女の声は涙まじりだった。

心から心配であるかのように。



……どちらが本心なのかわからない。


でも、案外、もしかしたら

どちらも本心なのかもしれない。


そんなものなのかもしれない。