「………え?」

「その人、僕じゃないよ。僕はそんなコメントしていない。
それに僕の病気は再発していない」

「……で、でも……いま……」


冬室くんは病気の話で、明らかに動揺していた。


「……再発はしてないけど、これからする可能性はある。

実は、みんなには隠してるけど……完治してないんだ。

僕の病気は5年間再発しなくて、やっと本当に完治したことになるんだよ。

それを指摘されたのかと思って、ちょっとビックリした」

「……あ」


じゃあ、私、勘違いして………


「笠原さん、最近様子がおかしかったの、その小説が原因なの?」

「…………」

「………笠原さんが小説書いているなんて知らなかった。すごいね。僕、読むのは好きだけど、文才ないから尊敬するよ」

「…………」

「……でも、さ。最近の笠原さんは、ちょっと心配だよ。なんだか学校でのことがおろそかになっているみたいで。

書いたことない僕が偉そうには言えないけど、小説より、もうちょっとリアルを大事にしてもいいかなって……」

「リアルってなに?」


私は後退り、冬室くんから離れた。


「学校での生活のこと?そんなの……うそばっかりじゃん。みんなうそつきばっかり。

なにがリアルよ。ネットの小説と、なにも変わらない………!」

「笠原さん……!」


踵を返し、冬室くんに背をむけて走り出す。

そのまま振り返ることなく教室に戻り、カバンを持つと家に帰った。


スマホを返してもらえなかったので、その夜は小説の更新が出来なかった。

でも、たとえあったとしても、更新でできていたかはわからない。


ひどい気分だった。

私は疲れ果て

その夜はひさびさにぐっすり眠った。