「……笠原さん!」
放課後。
冬室くんが私のところにやって来た。
「今日の練習はどうする?
明日、球技大会本番だし、やっておきたいよね。
ああ、でも、笠原さん、先にスマホを返してもらいにいったほうがいいか」
「………」
練習………。バスケ………。
そんなのしてる場合じゃない。
だって没収されたせいでずっと更新出来ていなかったから。
その分、早く書かないと。
「……笠原さん?」
冬室くんが黙っている私を、訝るように見ている。
「どうかした?……もしかして、没収されたのショックだったの?」
「………それは………」
「気にすることないよ。よくあることだし。きっとすぐに返してもらえる。
まあ、明日からはちょっと気を付けた方がいいかもしれないけど。あの先生、そういうの厳しいし、授業中はやめた方が………」
「…………だめだよ」
「ん?」
「だめなの。授業中でも書かないと……。
だって、待ってくれている人がいるんだもん……っ!」
「笠原さん?」
突然の私の叫びに、冬室くんがひるんだ。
私自身、どうしてこんな風に言ってしまったのかわからない。
ただ、無性にイライラしていた。
「………笠原さん、どうしたの?何の話?」
「………」
「笠原さん、こっち来て」
冬室くんは私の手を引いて、 教室を出ていった。