今度は私が首をかしげる番だった。


「…….どういうこと……?」


すると、冬室くんはハッとしたような表情になり、照れくさそうに頭をかいた。


「あ、ごめん。意味不明なこと言って。自分に浸ってるみたいで恥ずかしいな」

「そ、そんなことはないけど……」

「別に……その……意味はないから」

「…………」


そんな風に言われるとますます気になってしまう。

でも、冬室くんはこれ以上触れられたくはないのかもしれない。

どうしよう。

どう返せばいいのだろう。


「………そ、そんなに、面白いなら。私も………読みたい……かも」


悩んだ私は、気づけばそんなその場しのぎのことを言っていた。

冬室くんが意外そうに目を見開いた。


「本当?」

「……う、うん。その……良ければ、冬室くんが返却したあと、わ、私が借りてもいい?」

「もちろんだよ」


とても嬉しそうな冬室くんの笑顔。

そんな風に笑われては、その場しのぎの言葉だなんて言えるわけがない。


…まあ、いいか。


少し興味がわいたのは、本当だし。

冬室くんが好きな本を読んでみたいと、素直に思った。


「……笠原さん」

「え?」

「今度は一緒に図書室に行こう」

「…………………ん。また今度、……ね」


曖昧に濁した私の返事。

冬室くんはそれでも優しくうなずいた。