「……ふゆっ……」


驚きのため大声が出そうになり、慌てて口をおさえる。

図書室は基本的に私語禁止だ。

ならばと声をひそめて話しかけようとするも、やはり思いとどまった。

…あまり小さい声では冬室くんに聞こえないかもしれない。

なんとなく、彼の右耳に目がいく。


少し考えて、私は自習のカムフラージュのために持ってきたノートにペンを走らせた。


『いつからいたの?』


冬室くんはそれを見て、嬉しそうに表情をやわらげた。

胸ポケットからシャーペンを取り出して、私の文字の下に書き始める。


『10分くらい前。話しかけようかと思ったけど、笠原さん集中してたから』


結構前じゃないか。恥ずかしい。


『話しかけてくれていいのに。私に何か用だったの』


告白されたことが浮かび、胸が急にドキドキと落ち着かなくなっていく。

あれはきっと本気じゃないと。気にしないでいようとすればするほど、鼓動は早くなっていった。


冬室くんはそんな私の内心に気づく様子もなく、また返事をノートに綴った。


『別に用はないんだ。図書室に来たら、笠原さんの姿が見えたから』


…あ。特に用はないのか。

なーんだと拍子抜けした私を尻目に、冬室くんは更にペンを動かす。


『ってのは、半分言い訳。


本当は


教室に笠原さんがいないから、探していたんだ。


一緒にいたくて』