私のことを好きになる人がいるわけない。

友達すらろくにいないのだ。

くわえて、お世辞にも外見がいいとも言えない。

暗くて、地味で、冴えなくて……何の取り柄もなくて。


私だって、そんな私が好きじゃない。


だから、誰かが私を好きになるなんて、そんな……


(……ありえないよ)



「……ごめん、迷惑かな」

「えっ!?」


すまなそうな冬室くんの声に、我に返る。

冬室くんは困ったように笑っていた。


「……突然好きとか言われても困るよな。僕、あまり笠原さんと仲がいいわけじゃないし」

「え、あ、いや、その……困るとかじゃなくて…。その……えーと……」


どうしよう。

なんて返せばいいんだろう。


私を好きだなんて全然信じられない。

でも

冬室くんって、そんな変なうそをつく人だとも思えない。


今の少し困った笑顔も……

うそをついているようには見えない。


「……わ、私……その……どうすればいいかわからなくて……」


結局、心のままに曖昧な答えを返した。

『ごめんなさい』と付け加えて。


冬室くんは優しく目を細める。


「……僕のこと、嫌いではないんだよね」

「……う、うん」

「じゃあ、……友達ならいいかな」

「えっ…」

「ありがちだけど、友達から……とかはどうかなって」

「………」


冬室くんが笑う。

とても優しく。


「……どう?笠原さん」


私は……


「……わ、かった。いい……よ……」


その笑顔に負けたみたいに、ただうなずいた。