「な、なんでっ?わ、私に、その、何か用なの……?」

「…うん。笠原さんに話があって」

「話……?」

「…わからない?」


冬室くんは小さく首をかしげて聞いてくるが、わかるわけがない。

普段ほとんど関わりがないのだ。

個人的に話をするような仲ではないし、多分冬室くんに恨みを買うようなこともしていないと思う。

私は首を横にぶんぶんと振りながら『わかりません』と答えた。


「……この状況だと、他にないと思うけど」

「……?」


一向に彼の言うことを理解できない私に、冬室くんが困ったように笑う。

その笑顔は少し寂しそうにも見えた。


「……告白」

「え?」

「笠原さんのことが好きだ」

「……えっ!?」

「……それを、言いたかったんだよ」

「……………………………」


冬室くんが私を見つめる。

優しい微笑みを浮かべながら。

唯一の光を宿す左目が私を映し出し、彼がまばたきするたびにその光は小さく形を変える。

それは深く黒い右目と対照的で

こう思うのはふさわしくないのかもしれないが、とても美しく見えた。


その目が私をとらえて、……好きだと言った。


私は……


(……絶対うそだ)


と、確信する。