猫が朝から、猫ではなく鬼になった


いつも、ヘラヘラと私に纏わり付いていた
あの猫が……


見知らぬ男を拷問していると知ったのは



「ぎゃあぁーーー!」



最初の叫びからだ




「紅音さん、散歩に行かない?」



私を気づかってくれて
沖田は、散歩に誘ってくれた


しかし


そんな気になれなかった



土方が拷問を終え、あの蔵から出て来たら


私が聞きたくない台詞を言う



〝戦に行く〟



姿や仕草は、全く別人だが…
生まれ代わりだと確信した
私にとっては、予想するのは容易い



「私に構わず、出陣の支度した方が良いぞ
風邪ひき以外を広間に集めておけ」



「え?」



間抜けな顔をした沖田を他所に

私は、炊事場に向かった



味のわからない私が、唯一作れるもの

握り飯を作る為



「紅音 ここにいたのかい
おや?これは?」



私を探しにやってきた山南が
目を輝かせる


「出掛ける前に食べさせようかと」


「気が利くねぇ!ありがとう!」



やはり、出陣するらしく

留守番の山南は、私の見張り役だろう



「こんな時に出て行くほど
私は、恩知らずではないぞ」


「???
僕は、土方君から君を守るようにと
頼まれたんだよ
だから、早速探しに来たんだけどねぇ」


「皆のところに持って行って
私は、火の始末するから」


「皆、喜ぶだろうね!」








見送りは、しない


土方の邪魔になりたくないから




戦に行くとなれば、人がかわる


アイツは、皆のことが1番で
自分を守らない


立ち居振る舞いをしってて


人を率いるのが上手い


私に甘える猫ではなくなり



獲物を狙う狼のような男になる




「山南! 
……皆に、怪我するなって、言っといて」


「一緒に行って、言えば喜ぶのに」


「いい… 帰りを待っていると言って…」


「クスクス 伝えるよ」



素直じゃない


私の強がりは、山南にはお見通しだろう


散々、出て行くと言ってて
待っているなんて、おかしい



だけど…

もしも、怪我人が出たら

私の力が役に立つ




この力が…