屯所に戻り3日






傷は、すっかり癒えたものの

目覚める気配のない紅音に


「紅音…」


不安を隠せない土方は、この3日

ろくに食べず、眠らず

付きっきりになっていた



「にゃあーん!にゃあーん!」



蒼が嬉しそうに鳴く



「紅音?」


「なんだ?」


「痛いとこないか?」


「もう、治った」


「そうか、よかった」


「土方、嬉しいと思った…
守らなくてもいいと言ったが
助けに来てくれて、ありがとう
皆にも礼を言わないと」


起き上がった紅音を抱きしめた



「紅音がいないと…
俺は、俺じゃなくなる
俺は…先に死ぬだろうけど
紅音が先に死ぬことがあったら
俺は…生きていけない
紅音が、このまま死んでしまったらと
怖かった」


紅音は、土方の背に手を回した


「私は、何年と何回と
そんな気持ちを味わった
後を追うことも出来ない体で
誰かを想うことは
すごく胸が痛い
土方… 痩せた?
ちゃんと寝てなかったのか?
私は、死なないんだから
いちいち心配などするな
そんなに、心配されるなら
やはり、生きて別れた方が良い」


少し体を離した土方は、紅音の頬を撫でた
顔を上げた隙に、そっと

唇を重ねた 


抵抗することも、応じることもない

紅音の唇



土方が、紅音の頬を撫でる



「痛み以外… 何も感じない
土方の手が、どんなふうに私を撫で
その手のぬくもりや感触
土方の口づけも…
私には、何も…」


「だから…寒くないと言ってたのか?」


「……そう、男らに好き勝手されても」


「言うな!」


「抱かれても…」


「紅音!!」


「痛みしか……私には、ない」





蒼が、紅音の頬をなめる




「蒼のことさえ…
私には、わからない
この子の毛がふわふわだと聞いても
猫の舌がザラザラだと聞いても
私には…… わからない
だけど……
当分、生きていかないといけない
土方が死んだ後は
誰も助けてくれないだろうな」



意地悪な顔をして、紅音が土方を覗き込む



「文の出せるところならいいのか?
痛い目に合わないところならいいのか?
そんな場所、私は知らないから
土方が紹介してくれるか?」


「妻になってくれ!
別宅を用意するから!
蒼と暮らして、皆に遊びに行ってもらう
俺も会いに行く!
京が危険なら、江戸の姉に頼む!
だから…」


「生きて別れよう」


「妻に……」


「なれない
ごめん……なれそうにない」




紅音の状況や気持ちがわかるからこそ

土方は、抱きしめるしかなかった



「皆にお礼言いたい」



紅音が離せと暴れても


「土方さん……そろそろ離したら?」


紅音の様子を見に来た、皆の前でも


「……疲れた」


暴れ疲れて、紅音が眠ってしまっても