きっと私は、ずるい子だ。
だっていつも、挨拶出来ないならしてもらおうと思っている。












優希くん…旭優希くんは、部活の朝練のために朝早く学校に来る。

だから私は、優希くんが来る前に教室にいて、何事も無かったかのように挨拶をしてもらう。















優希くんは名前の通り優しい。
だからクラスの女子内では1、2を争う人気者だ…って話。男子とも、仲はいいらしい。全部友達情報だけど。













キラキラと、朝の光が教室に入ってくる。開けた窓から、冬の終わりの冷たく、春の訪れを感じさせるような香りが混じった風が吹き抜けた。
ぱら…と、文庫本のページがめくれる。
初めは優希くん目当てだったけれど、最近は、この時間の読書にもハマってる。朝の凛とした空気が好きになっていた。








暫く、無機質だけど感情こもった字面を追いかけていると、昇降口の方に控えめだが小走りした足音が聞こえた。優希くんだ。