「あのさ、これから時間ある?」
――時間?時間なんかくさるほどあるけど、それがなに?
聞かれてる意味がいまいち理解できなくて、私は思わず素直にうなずいてしまった。
「ほんと?じゃあ決まり!ちょっと、付き合って?」
三浦くんはそう言うと、私の手をつかんでそのまま引っ張るように歩いていく。
「え!ちょっ、まっ……!」
――なに!これ?どうなってんの?
ありえない展開に、頭が全然ついていかない。
三浦くんに引っ張られるままに、私はあとをついていくしかなかった。
駅前の商店街から少し離れた、なだらかな坂を上がってすぐの静かな住宅街。
そこでようやく三浦くんは足を止めた。
わりと速い歩調だったのと炎天下なのもあって、息がととのうまで少し時間がかかる。
見ると、目の前にあるのは小さな可愛らしい外観のカフェ。
ミントグリーンの外壁と白枠の窓。
大きな観葉植物が涼しそうに入口の横に置いてあった。
ファミレスとかなら愛里と何度か入ったことがあったけど、カフェは大人な感じがして興味はあったけど入ったことがない。

