彼は私なんか好きなわけじゃない。


ただ、見てると面白いってだけだ。


さっきの言葉がよみがえってくる。


愛里のことは可愛いって言ってたのに、私のことは面白いって……。


私をかばってくれてうれしかったのに、だけどそれは私だからじゃないんだ。



「……うっ……ふ……」



そう思ったら、涙が止まらなくなった。


空想の彼氏には抱いたことのない感情。


人を好きになるのが、こんなに苦しいなんて思ってもみなかった。


恋に恋してた方がずっと楽だったかもしれない。


私は靴をはきかえて、降りしきる雨の中にそのまま勢いよく飛び出した。


止まらない涙をごまかしてくれるように、雨粒が私の顔を洗い流してくれる。


ずぶぬれで走りながら、明日からのことを考えた。


あんな話を聞いてしまったから、もう男子とは話せないかもしれない。


中学のころに逆戻りだ。


せっかく少しだけ仲良くなれた三浦くんとでさえ、どう接していいかももうわからなくなっていた。