初恋マニュアル

どちらにしても借り物競争なわけだから、観覧席の生徒や家族や先生にお願いしに走らなきゃならない。


私はすっかり弱気になって、もう怒られてもいいから、とりあえず愛里のところに走ろうって決めていた。


そうすれば、愛里も一緒に考えてくれるかもしれないし、もしかしたら愛里がだれかにお願いしてくれるかもしれない。


ピーっと集合の合図の笛がなって、借り物競争の生徒たちが整列する。


私は前から六列目だ。


愛里のいる方角をちらっと確認してから、先に走るひとたちの様子を見ていると、わりと簡単にお題をこなしてて、それはさっきの女子も言ってた、メガネだったりタオルだったり、だれかの名前だったり先生だったり様々だ。


自分のときはなんのお題なんだろうってドキドキしながら、出番をひたすら待った。


ようやく自分の番が来て、ヨーイ!という掛け声に準備をする。


パンッ!というピストルの音とともに、みんなが一斉にかけだした。


私は当然足が遅いから、みんなの背中を追いかける形になる。


並べられた紙をみんながそれぞれひろって、残された最後の一枚を私もひろいあげた。