勢いよく店のドアが開いて、顔をのぞかせたのは愛里と羽生くんだった。



「ちょっと美羽!どこにいたのよ!心配したでしょう?」



顔を見るなりそう怒鳴られてしゅんとなる。


だけどこんなに怒るってことはそれだけ心配してくれたってことだ。



「……ごめんなさい」



そう素直にあやまると、カウンター席に座っていた私のそばまでまっすぐ歩いてきた愛里は、そのまま私を抱きしめた。



「ばか美羽……心配したんだから」



ごめんなさいともう1度言うと、愛里のうでにキュッと力がこもる。


高校に入って、三浦くんを好きになってから愛里には心配かけっぱなしで、今回のことだって私のために早苗さんや羽生くんと計画してくれたのに、私はそれをあっさり拒否して逃げてしまった。


それでもこうして私のために怒ったり泣いたりしてくれる愛里に、どれだけ感謝しても足りないくらいだ。


そんな私たちを優しく見守る早苗さんは、ホッとしたように微笑みながら大きめのカップを2つそっと差し出した。



「みんな、寒かったでしょう?ほら、ココアでも飲んであったまって?」



ドアの前に立ったままだった羽生くんを呼び寄せながら、湯気の上がったカップをもう一つ追加する。


いい香りがしてくると、愛里がようやく私からはなれてちょっと照れたように笑いながら短くフッと息を吐いた。